捩じれた面影

果たして、俺にこの体に値する資格などあったのだろうか。

悔しさをこめて、拳で廃業した店を殴りつけるなり、ガラスがピキッとひび割れた。

窓に映る捩じれた、とでも言おうか、歪んだ顔は、俺の仕草に倣って動いたからこそ、いや応なく俺自身のものだと認めざるを得なかった。

俺を嘲笑っていた。

初心者の傀儡師が糸でグイッと動かされた人形のように、霞んだ逢魔が時、陰鬱に塗り込められた景色の前で、ただ操られていた。

情けないことだった。下等の人間にすぎなかった。

でも、せめて今夜、天使の隣に座れた。

二言と会釈以上のことをするのが、あれが究極の機会であったか否かは、いまだに曖昧だった。

柔らかそうな唇からあの言葉が俺に向けられるなんて、考えただけで舞い上がって耐えられなかった。

本物の対話。多くの人にとって、こんな考えすぎはくだらないことだ。

だが、くだらない俺にとっては、これこそが貴重なものだった。

唯一の機会は、もう指の間からすり抜けたのか。

求愛というのは、人間にとってごく普通の営みではないだろうか。

俺は、世界という画布に人間の姿を塗りたくっているにすずなかった。人間の営みができるわけではなかったのだ。

あの男、あなたにすらすらと話しかけたなんて、信じられなかった。求愛だったのだ。それを、あの男はしていたのだ。

ガラスにもう一度拳を殴りつけるなり、ピキッとひびが広がった。

その凄惨な記憶は、心臓に釘を打ち込まれるような苦痛に思えてならない。

俺は飲み会を早く出るところだった。結局、あなたには二言以上かけずじまいだった。

思えば、あの時、三十秒足らずの、あなたが俺のかたわらに腰かけていたその一瞬に戻れるものなら…

後ろで車がゴトゴトと走り抜けた。古くて、ボロボロで、俺並みだった。車の振動に窓ガラスがガタガタと震え、映りはまるで嘲笑うかのように舞い乱れた。ポケットに入れた拳をさらに握りしめた。

止めろ。止めろ!俺はあなたに声をかけることはできなかったものの、あの男を邪魔することならできるだろうと思った。

ただの邪魔者だったのか?

俺は何回も機会を与えられたにしろ、自分の中に一粒の勇気さえも掴むことができなかった。あなたの前に立つそばから、俺の意思は操り糸を断たれたように崩れ落ちてしまった。

意思を持つといっても、ガキの欲望に過ぎなかった。生きてきた長い年月にわたって、一度も大人になった気がしなかった。

そしてガキのように、駄々をこねた。あの窓を犠牲にした。ガラスにもう拳を3回目殴りつけるなり、バキッと割れた音が通りに響き渡った。今になって初めて、深夜の交通の遠い響きが静まり返ったのに気づいた。

その瞬間、俺は心の中で思った、この体、この人生、俺には値しないのだと。

「そう言うなら、体を渡せ」凍りつくような息が、うなじを覆いかぶさった。身体中の感覚が、冷たいという言葉では足りなかった。まるで耳元で吹き込まれているかのように、あの声がはっきりと聞こえた。

「だれ」俺と言おうとしたが、口を開けて言葉を発するのがやっとだった。

凍りついた空気は、俺の息を避けて通った。窒息しそうだった。

逃げようとするが、足は動かなかった。下が見えるくらいに何とか頭を下げたその瞬間、暗闇の中から手が伸びてきて、足首をしっかりと掴んだ。恐怖に見入る中、さらに両手が伸びてきて、足も胴も捕らえられ、その掴みからは、とても逃れられはしないとすぐに分かった。

周りの世界は、狭い廊下に押し込められたように、縮まったようだった。頭をぐいっと引っ張られ、窓に映りは、前よりもさらに異形に歪んでいた。脅迫的、とでも言うべき、徹底した悪の表情が、俺をじっと見据えていた。

「お前の体を、渡せ、お前の体。」

恐怖に満ちた叫び声が胃の底から噴き出してきたが、口から放たれる前に、見えない親指が頬に引っかかり、上下の歯列までも抉るように押し広げ、口を最大限にこじ開けた。今まで静止していた映りが、初めて自由に動いた。鷹のような爪が差し伸べられ、喉の奥に届き、激しく鼓動する心臓を捕らえた。

その瞬間、鼓動は止められ、ついに世界全体が凍りついた。歪んだ姿は、喉の奥へ差し入れた腕を支えにして、映りから這い出し、開き切った口から胸の中へと這い込んできた。

ついに、俺の弱い意識は揺らいで、戻れない深淵へと落ちていった。


窓に映る顔は、とでも言おうか、俺のものだった顔であり、ほとんど人間のようだが、歪んだ表情で俺を睨んでいた。
「お前とは違い、私はこの体とこの機会を残りの人生で大切にしてやろう。」
俺の、違う、彼の唇はぎこちなく動いた。そして、かつて俺が持っていた体が意のままに自由に動くのを、恐怖に凍りつきながら見ていた。彼はおぼつかなく道を歩き去り、俺はこれまでに経験したことのないほどの沈黙に沈んだ。

俺に機会が訪れることは、もう決してない。

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