彼は窓から差し込む月光にもたれかかるように立ち、憧れるような目でその絵を眺めている。
絹の古布に包まれた姿。背は高いのに、強風で吹き飛ばされそうな繊細な体つきだ。
まるでこの廊下に飾られた甲冑と見間違うほど、じっと動かずに立っている。
彼の顔は痩せこけて、色は白でも、雪のような白じゃなくて、汚れたリネンのような白さ。
静けさに対して、私の心臓の鼓動が速まった。この瞬間の前には気づかなかった夜の寒さが、今、皮膚に這っている。
指は水桶の柄を握りしめ、苦しくなるほど緩まない。筋肉がだんだん疲れてきたので、水桶を置かないと落としてしまう。
しかし、恐怖が身体に流れるせいで動けない。逃げなければならないと信じているけれど、心の中には引き寄せられる気持ちがある。
この見たこともない男、どこから来たのかもわからない、なぜここにいるのかもわからない、どんな性格なのかも知らない、この全く不思議な格好に、興味が湧いてたまらない。
私はこのハーグリーブ邸宅 のハウスメイドだ。他のメイドに苛められて、最近は夜勤をさせられ、真夜中まで掃除をしてきた。
ハーグリーブ家は落ちぶれてしまったため、多くのメイドが首になり、私は邸宅のさらに多くのエリアの清掃を任されるようになった。
でも、怒っているわけではない。まだ仕事があって嬉しい。ハーグリーブ家のおかげで、こうして屋根の下で眠れる。
労働時間が長くなり、仕事量も多すぎて、日没の直前まで働く日が当たり前になった。
今日もいつも通りに、夜遅くまでずっと働き続けています。私はパントリーを掃除するためにそこへ向かっていた。
この一人ぼっちの仕事に慣れていた。まだ起きている人を見るのは珍しい。
それに、夜の間、ハーグリーブ家の人以外は見たことがない。
目の前のこの男は、絶対に見たことがない。誰かに警告する必要があるって分かっているけど、まだ動いていない。今まで数分が過ぎてきた。なぜ、この奇妙な男をまだ眺めているのか?
彼の顔から一筋の髪が後ろへ落ちて、彼の目が見えるようになった。
10歩離れたところからでも、はっきりと見える。
感情が溢れようとするだらけの目をしている。
一生分の苦しい感情を抱えているような視線。
彼の青白い肌とは対照的に、目は深紅色に染まっていた。
そしてその目は、私をじっと見つめている。